2019/06/10
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この記事の目次
電力託送料金の発電事業者負担の議論がはじまる
太陽光発電業界では電力託送料金の発電事業者負担の問題がホットです。
ちなみに電力託送料金とは発電した「電力を運ぶためにかかる費用」のことです。
「これまで最終電力消費者が負担していた電力を運ぶためにかかる費用を発電事業者に負担させる」議論をしているということになります。
電力ガス取引監視等委員会の方針
問題となっているのは経済産業省の電力ガス取引監視等委員会で
「電力発電事業者にも託送料金を課すという方向でおおむね一致した」と報告されていることです。
この報告によると「電力発電事業者にも託送料金を課すという方向がすでに決まっている」と読み取れます。
委員会資料はこちら
改めて固定価格買取制度とは何だったのか考えてみる
ご存知のように太陽光発電に代表される再生可能エネルギーは経済産業省のもの固定価格買取制度(FIT)が導入されています。
固定価格買取制度とは発電した電力は一定期間決まった価格で買い取るという制度です。
その背景には東日本大震災に端を発した日本のエネルギー危機があります。
この未曽有の危機に対応するため国が再生可能エネルギーの導入を後押しするために導入した制度が固定価格買取制度です。
現在の太陽光発電ブームは、その考えに賛同した民間企業が自らのお金(資本)を使って太陽光発電設備を導入したことで起こりました。
民による投資ですのでもちろん慈善事業ではありません。少なくとも利益がでない投資はありえません。
しかしながらその根底には日本のエネルギー危機をなんとかしたいという思いがあったのではないでしょうか。
少なくとも私はその思いでなけなしの自己資金を投入して、太陽光発電所を作りました。
経済産業省が言っていることの意訳
ところが今、その再生可能エネルギー導入時の梯子が外されようとしています。
しかも再生可能エネルギーの普及を後押しする立場の経済産業省自身によってです。
悪い言い方をするならば経済産業省が
「今まで手持ち弁当でエネルギーを供給してくれてありがとう。そろそろ原発使ってOKっぽいから、太陽光発電はもういいや。電力買取価格はルールだから変えられないけど、新しいルールをつくって君たちの利益を中抜きするけどよろしくね。」
と言ってるに等しいです。(・・・なんか自分で書いていて腹が立ってきました。)
電力託送料金の発電事業者負担は国による中小企業の下請けいじめ
これと似たような話を最近どこかで聞いたなぁと思い考えてみました。
これですね。
安倍晋三首相は15日、日本商工会議所が開いた通常会員総会で、自動車業界などを念頭に「中小企業の下請け取引の条件改善に全力で取り組む」と述べ、大企業が下請けに対して一律の値下げを強要する商慣習を是正する考えを示した。
毎日新聞:安倍首相「中小企業の下請け取引の条件改善に全力で」より
電力託送料金の発電事業者負担の問題は、大メーカーによる中小企業の下請けいじめに似ています。
初めだけ良いことを言って取引開始したものの、大企業の需要に対応するために工場や社員を増やした後は、その固定費を維持するために大企業の仕事を失うことはできない。結果、大企業の理不尽な値下げ要求には逆らえなくなる。
まさにこの構図です。
そもそも発電事業者である我々には選択権はありませんからね。国が決めたルールに従わざるを得ません。
太陽光発電業界では、前述の自動車業界とはまったく逆に中小企業を擁護する立場の国が、中小起業である発電事業者をいじめているように感じてしまいます。
まとめ
固定価格買取制度を骨抜きにする電力託送料金の発電事業者負担がいま議論されています。
経済産業省の電力ガス取引監視等委員会の中の人たちは、もう一度我々発電事業者の視点になって新制度を考えて欲しいです。
我々は、経済産業省が主導した再生可能エネルギーの普及制度を信じて、そしてそのビジョンに賛同して太陽光発電施設を導入しました。
ところが経済産業省はそのルールを自ら変えようとしています。いわば後出しジャンケンです。
後出しジャンケンが許される「必ず負ける勝負」を好んする人はいません。
もし電力託送料金の発電事業者負担が認められれば、経済産業省自らの手によって再生可能エネルギー普及の幕をおろすことになるでしょう。
もう一度、東日本大震災のエネルギー危機を思い出してみてください。
同じことを2度と繰り返してはいけません。
再生可能エネルギーの火をここで消さないために、
経済産業省の電力ガス取引監視等委員会の中の人たちには、もう一度あの時の事を思い出してほしいです。
追記
太陽子発電ムラ代表太陽王子さんが「太陽光発電事業者から託送料金が徴収されるのは形式上の話のようです。」との記事を書かれています。
これにより本混乱は少しずつ沈静化しつつあるようです。
とはいうものの今後も動向をしっかり見守っていきたいと思います。